■ 人間は「自然のリズムで生きるように」つくられている
定年後の生活が始まってから、私は毎日のように走ったり、自転車に乗ったり、泳いだり、ゴルフをしたりしています。いわゆるアウトドア中心の生活ですが、この暮らしが想像以上に心身ともに心地よいことに驚いています。
なぜこれほど気持ちがいいのかを考えてみると、どうやら人間がもともと持っている「生活の設計図」のようなものが関係しているのではないかと思うようになりました。
私たちの祖先は、原始の時代に走り、歩き、泳ぎ、季節の変化に合わせて食料を探し、自然と共に生きていました。つまり**“よく動き、自然を感じ、季節とともに暮らす”**ことは、人間の歴史において当たり前だったのです。
だからこそ、現代のアウトドア生活が心地よく感じられるのは、身体が本来のモードを取り戻しているだけなのだろうと感じます。
■ 季節を楽しむ生活が、心を豊かにしてくれる
以前は、仕事中心の生活で季節の移ろいをゆっくり味わう時間は多くありませんでした。
しかし今は、桜の季節には桜ランを、紅葉が美しい時期には紅葉ランを楽しむようになりました。走りながら見る桜の薄桃色や、木々が金色に染まる秋の光景は、言葉にできないほど美しいものです。
ふと、「なぜこんなにも心が動くのだろう」と考えてみると、人間が長い年月の中で季節と共に生きてきたDNAのようなものが、今でも私たちに残っているからではないかと思うのです。季節の変化を感じて生きることは、本来、人間にとって自然で、そして幸せなことなのかもしれません。
■ “旬”の食べ物が体に染み渡る理由
食生活についても同じようなことを感じます。
私はできるだけ旬の食材を食べるようにしていますが、これも単なる趣味ではなく、身体が季節ごとに必要な栄養を自然と求めているからなのだと思います。
かつての人間は、季節に応じて手に入る食料が異なっていました。
春には若い葉物、夏には果実や魚、秋には脂の乗った魚や根菜、冬には保存食。
つまり、身体は一年のサイクルに合わせて栄養を取るように設計されているのです。
旬の食材が「おいしい」と感じるのは、身体が本来のリズムに従っているからなのでしょう。
■ 芸術に惹かれるのも、自然な流れ
自然や季節の変化をよく感じるようになると、不思議と芸術にも興味が広がってきます。
最近、美術館を訪れる機会が増えたのですが、これも自然のリズムの中で生活することで、心に“余白”が生まれ、感性が磨かれていくからなのだと感じます。
自然×運動×季節×食×芸術
この組み合わせは、実は人間にとってとても本来的で、人間らしい生き方なのだと思います。
■ エアコン完備のオフィスで一日中過ごす生活は、人間にとって自然ではない
一方で、毎日電車に乗り、エアコンの効いたオフィスで一日中過ごす生活は、人類史的に見ると“極めて最近生まれた特異な環境”です。
動かず、自然を感じず、季節から切り離され、同じ姿勢のまま長時間過ごす。
これは、人間本来の生活パターンとはだいぶ違います。
だからこそ、多くの人が疲れやすくなったり、ストレスを感じたり、自然の中に出るとホッとしたりするのでしょう。
■ 自然と調和する生き方が、人を健やかにする
定年後のアウトドア中心の生活は、ただの趣味ではなく、
身体と心が「人間本来の姿に戻っていく」プロセスのように感じます。
自然を楽しみ、季節を感じ、旬を味わい、体を動かし、芸術に触れる。
こうした生活が、思っていた以上に人生を豊かにしてくれました。
68歳になって、改めて「人間とは本来どう生きるのが自然なのか」を考えるようになりました。
そして今の生活が、驚くほどその答えに近いのだと感じています。

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