~ミトコンドリア・活性酸素・マクロファージ・サーチュインの関係~
「老化は止められない」とよく言われますが、実は老化のスピードは人によって大きく違います。
その理由のひとつが、細胞の中で起こる“悪循環”です。今回は、ミトコンドリア・活性酸素(ROS)・マクロファージ・サーチュイン遺伝子の関係を、順番に説明していきます。
① ミトコンドリア機能低下
ミトコンドリアは、細胞の中でエネルギー(ATP)をつくる工場のような存在です。
年齢やストレス、生活習慣の影響でこの機能が低下すると、エネルギー生産が不安定になり、副産物として活性酸素(ROS)が増えてしまいます。
⇒なので、軽いストレス(ハルミシス効果)でミトコンドリアの修復・新生スイッチが入るために「食事制限」「ちょっときつめの運動」「サウナ」「水風呂」などがよい。

⇒赤外線LEDもミトコンドリアの活性化には有効です。

② 活性酸素(ROS Reactive Oxygen Species)増加
活性酸素は少量なら体の防御やシグナルに役立ちますが、過剰になるとDNAやタンパク質を酸化させ、細胞に損傷を与えます。体内では主にミトコンドリアのエネルギー生成過程で自然に発生します。
この酸化ストレスは、免疫細胞を刺激し、炎症反応を引き起こします。
マクロファージM1型優位化
マクロファージは、体の中で異物処理や壊れた細胞の片付けを行う免疫細胞です。
細菌やウイルスなどの侵入者を取り込み分解したり、炎症反応を起こして他の免疫細胞を呼び寄せたり、逆に炎症を鎮めて組織を修復したりと、状況に応じて役割を切り替えます。
マクロファージには主に2つのモードがあります。
- M1型(攻撃モード):病原体や損傷組織を排除するため、炎症性物質や活性酸素を放出する。
- M2型(修復モード):炎症を鎮め、組織の修復や再生を促す。
しかし、活性酸素(ROS)が増えたり、損傷した細胞の断片が多く存在する環境では、マクロファージはM1型に偏りやすくなります。
その結果、炎症性サイトカイン(TNF-αやIL-6など)が大量に放出され、炎症が慢性化してしまいます。
慢性炎症(inflammaging)の持続
本来、炎症は短期間で終わるはずですが、M1型優位が続くと炎症が長引きます。
この“慢性炎症”は血管、筋肉、脳など全身に悪影響を及ぼし、「炎症性老化(inflammaging)」とも呼ばれています。
⇒活性酸素を化学的に無害化するには、抗酸化物質の摂取で中和させるのが効果的です。「食事」「サプリ(コエンザイムQ10、アスタキサンチン等」

⑤ サーチュイン遺伝子の活性低下
サーチュインは「長寿遺伝子」とも呼ばれ、DNA修復やミトコンドリアの新生、炎症抑制などに関与します。
しかし慢性炎症や酸化ストレスが続くと、サーチュインを働かせるために必要なNAD⁺が減少し、修復力そのものが落ちてしまいます。
⇒サーチュインはNAD⁺依存性の酵素なので、NAD⁺が減ると動けなくなります。慢性炎症や酸化ストレスはこのNAD⁺を消耗します。なので、体内で直接NAD⁺に変換される前駆体のNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)経口などがいいそうです。
⑥ 老化加速
ミトコンドリアの低下 → ROS増加 → M1型優位 → 慢性炎症 → サーチュイン低下、という流れが続くと、修復力は低下し、細胞・組織は急速に衰えていきます。
これが“老化の悪循環”です。
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