「呼吸」と「体幹」は、まったく別物だと思っていませんか?
実はこの2つ、深く結びついています。私自身、長年ランニングやゴルフ、スイム、トライアスロンに取り組んできて、「息の吐き方」がパフォーマンスに大きく影響することを体感しました。
なぜ「吐く」ことが重要なのか
呼吸といえば「吸う」方に意識が向きがちですが、本当に大切なのは「吐く」ことです。息をしっかり吐ききることで、
呼吸筋(胸横筋・横隔膜・腹横筋など)がしっかり動員される
体幹(腹圧)が自然に入る
無駄な力みが抜けて、動きがスムーズになる
この背景には、解剖学的にも明確な根拠があります。胸横筋は肋骨の間に位置し、主に呼気を補助します。横隔膜は吸気の主動筋ですが、呼気時にリラックスすることで、胸郭が収縮しやすくなります。また腹横筋は腹部を締める役割があり、強制呼気(力を入れて吐く)で特に活躍します。
息を吐ききることで、これらの筋が協調して働き、自然な腹圧が形成されます。腹圧は腰椎の安定に関与し、運動中の体幹保持に直結します。これは理学療法やリハビリテーションの現場でも重要視されている考え方です。
スイムで「水中で吐き続ける」ようにしただけで、息が上がらなくなった経験があります。
ランでも、25km過ぎから脚が重くなる原因が、呼吸の乱れ(=体幹のゆるみ)にあったと気づきました。
ゴルフでも「よいしょ」と吐いて打つと振れる
ゴルフのスイングでも同じです。私の場合、「よいしょ」と声を出すことで、自然に息が吐けて力みが抜け、ヘッドが走るようになりました。これは野球のピッチャーが投げるときに声を出すのと同じ原理です。
声を出すことで自然に呼気が促され、呼吸筋が瞬間的に収縮し、腹圧が高まります。これにより軸が安定し、瞬間的なパワー伝達がスムーズになります。つまり、「吐く」動作は単なるリラックスではなく、動作の出力を高めるためのトリガーでもあるのです。
呼吸を止めない、浅くしない
エアロフィットなどの呼吸筋トレーニング器具を使っていても、「吸う」「吐く」「止める」を機械的にやるだけでは意味がありません。実際にスポーツ動作の中で、「どう吐くか」を意識してはじめて、体幹の安定やフォームの改善につながります。
医学的にも、呼吸筋トレーニングはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や心不全の患者の呼吸効率改善にも用いられており、健常者においても持久力・呼吸効率の向上に寄与することが複数の研究で示されています。
デスクワーク中や日常でも応用できる
鼻テープで睡眠の質が上がったという体験からも、日常の呼吸が浅かったことに気づきました。
日中のデスクワーク中でも、鼻で静かに息を吸い、長く吐く習慣をつけることで、集中力や姿勢が改善されます。
安静時にゆっくりとした呼吸をすることで、副交感神経が優位になり、自律神経のバランスが整います。これにより、ストレスの軽減や血圧安定、内臓機能の改善といった全身への好影響も期待できます。
「吐く」を意識するだけで変わる
スイム:水中で吐く→息が続く
ラン:吐くリズムを崩さない→ハムが張らない
ゴルフ:「よいしょ」で吐く→スムーズに振れる
バイク:登りで吐く→体幹が入る
呼吸を制する者が、フォームを制す。吸うことより、まず吐くことを意識してみてください。
私自身、「3年エアロフィットを続けてようやくこの意味が腑に落ちた」と言えます。



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